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告白 [本]

湊かなえ「告白」を読みました。
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一学期最後のホームルーム。
女性教師は、目の前にいるクラスの中学生によって、自らの娘が殺されたことを告白する。
第29回小説推理新人賞、2009年本屋大賞受賞。
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女性教師の告白に始まり、その前後をなぞるように、犯人や関係者による語りで物語が進む。
それぞれが自らの暗部をさらす文章が延々と続き、決して愉快ではないけれど、
文と構成のうまさにひきこまれて一気に読んでしまった。

読後感は桐野夏生のグロテスクとか残虐記に似ている。
教室や勉強部屋といった閉塞した空間に、狂気がしんしんと層をなしていく。
そんな陰気な物語だけど、忌避する感情より好奇心のほうが先に立つ。
人間という生き物の底をもっと晒して見せて欲しい。
いっそ見たくなかったと落ち込むと同時に、なにかが少し満たされたような気持ちにもなる。

この小説では、男より女のほうが強靭に描かれている。
第一章で氷点下の裁きをくだした女性教師が、終章にて再び登場したとき
「最凶キャラキター!」と快哉をあげたい気持ちになりました。
(女性教師をこんなに応援しちゃうのはなぜかしら。
生意気な子供をぎゃふんと言わせてやる、という意地悪おばさん的な心理かな。
けど、犯人側もけっこう可哀想と言えば可哀想なのよね。
なんにしろまず彼女が愛娘の命を奪われたというところに同情できないと、この結末を
支持することはできないでしょう。
それほどにこの教師の「復讐」はエグい。)

ラストの展開は少し急いでるかなという感もなくはないけど、十分に衝撃がありました。
満足です。

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のぼうの城 [本]

和田竜「のぼうの城」を読みました。
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戦国の乱世、天下統一を目指す秀吉の軍勢が、ついに関東に襲いかかってきた。
その圧倒的な武力の前に小田原勢が次々と敗北するなか、ただひとつ落ちなかった城がある。
埼玉県行田市に位置する「忍城」(おしじょう)。
その総大将は、領民から「のぼう様(でくのぼう」と呼ばれている男だった。
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久しぶりの時代小説。
そりゃ現代小説に比べて漢字は多めだけど、凝りすぎた描写は少ないので非常に読みやすい。
各人物のキャラクターがはっきりしすぎるほど立っている中、「のぼう」だけはつかみどころを見せず、またそれが彼の懐の深さを演出している。
ストーリーも想像の斜め上をいく展開につぐ展開。
いやー、うん、面白かったっす。

実際の史実に基づいてるってところも、ぐっとくる。
桶狭間とか川中島とか有名な合戦以外にも、こんなエキサイティングな戦いがあったのかと、興奮しながら読みました。

カバーイラストがオノ・ナツメというのもうれしい。編集者に拍手!
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東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン [本]

リリー・フランキー「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン」を読みました。

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幼き頃の九州での日々。
そして上京してはじめて自分の家をもち、そこで暮らした母との日々。
失われそうになって思い出される数々の出来事を独特の筆致でつづる。
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学生のころは毎週ぴあを買っていた。(もう十数年前になっちゃうんだなぁ)
買うといつも最初に映画欄をめくってリリーのコラムを読むのが慣わしで、あの頃のちょっとした楽しみだった。
それが最近になって彼の姿をテレビで見るようになってびっくり。
こんなマスメディアのどまんなかに来ちゃって大丈夫なのかと。
そういえばおでんくんもヒットしてるし、この小説も本屋大賞とって売れまくってるみたいだしなあ。(おでんくん好きー!娘の幼稚園バッグにはおでんくん人形がぶらさがってる)
と、がぜん興味をもちながらページをめくってみたわけで。

全体的な感触で言うと、たけしくんハイ!を湿らせて長くしたかんじに似てるかな。小説というよりエッセイに近いと思う。
作者独特の天然の面白味がところどころにある。
ちょっと独善的じゃないかなぁ、と感じた文章もあったけど、作者のキャラクターに押し切られてしまった。

正直、ボロ泣きでした。
しょうがないよー。
だって、冒頭からびしびし喪失を予感させつつ物語が始まり、そして予定された死に向かってしんしんと思い出語りは進む。
しかも、ほぼ実話ときた。もう両手をあげて降参するしかない。
これ書くの、苦しかっただろうな。。。読んでるほうも苦しいよ。

人生が掃除機だったり、東京タワーが独楽だったり、感性が独特で面白かった。
大局を卑近に例えるんだな。
そういうセンス、おでんくんにも通じる気がする。

おでん村のおでんたちは、食べられても食べられてもおでん沼から復活してくる。
死のない世界。そこで安心して繰り広げられる喜劇。
でもおでんくんは、いまだ見ぬお母さんを探しつづけている。


容疑者Xの献身 [本]

東野圭吾「レイクサイド」「白夜行」「容疑者Xの献身」を読みました。

「レイクサイド」
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中学受験を控えた子を持つ家族が集まり、湖畔で勉強合宿を開催する。
そこで起こった殺人事件。隠蔽に奔走する大人たち、そして子供たちは・・・
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子供のため、という言葉は、親にとって都合のいい言葉である。
外部にも通りやすいし、自らも納得できる。
そんな簡単な言葉で満足し、思考停止することが、子供にとってどれだけ不幸なことであろうか、と思った。

「白夜行」
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1973年、大阪で質屋の主人が殺害される。
結局事件は迷宮入りに。しかし、事件を追う刑事はある男と女の存在に気づく。
悪に手を染め、暗がりに息を潜める男。美貌と才覚に富み、華やかに成功する女。
この二人に安息の夜は訪れるのであろうか。
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結局最後まで、警察は犯人を拘束できない。
犯人も自ら犯行について何も表明しない。
綴られるのはただ犯人の(犯行時以外の)行動のみである。
しかし事実が明らかになるにつれ、読者も真犯人が誰であるか認めざるを得なくなっていく。
まさかそんなうまくいくはずないじゃん、とも思う場面もあるが、犯人は巧妙にすり抜けていく。

あえて表の顔だけを浮き彫りにして、その奥にひそむ底知れない負を表現する。
こういう怖さの表現もあるんだなと思った。

「容疑者Xの献身」
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数学を追求することだけが生きがいの高校教師。
容姿は冴えないが、天才的な頭脳を持つ。
そんな彼が弁当屋で働くシングルマザーに恋をする。
愛した女を守るため、彼は完全犯罪の成立を目論む。自分の全てをかけて。
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愛、捧げる愛(ここは哀・戦士のフレーズで)
トリックも面白くできてる。学者同士の対決、数学のたとえがうまくきいてる。
真相が明らかになるとき、ちゃんと驚きをもたらしてくれる。
物語の最初から最後まで、どっしりと貫くのは男の深い愛情。
ラスト2ページで、ぶわっと泣けてくる。
とてもストレートで力強い。
この小説すごいすよ。

-以上三篇通じての感想-

善か悪か、この作者はベクトルを示さない。
犯人が罪を悔いるとか、罪を償うとか、そういった描写もない。
犯人をどう断罪するかは、読者にゆだねられているんだと思う。
愛あるゆえに動機が生まれ、罪をおかす。
愛と罪の世界。そこはかとなく異教のかほりを感じました。
(と勝手に私が思っただけで、小説中に信仰の描写はでてきません)


対岸の彼女 [本]

角田光代「対岸の彼女」を読みました。

しっかり地に足ついた文章で読みやすく、物語の運びもていねいである。
年を重ねること、それは新たに出会いを重ねること。
前向きなメッセージがちゃんと伝わってくる。

30歳をすぎた女ふたりが、紆余曲折を経て友情を取り戻す。
よかったねよかったね、と素直に喜んであげたい、ただ・・・

ああ、専業主婦はやっぱりこういう描かれ方か、と。
子供を幼稚園に通わす母親達は、表面上仲良くしているが小さなグループで固まっては噂話に花を咲かせ、密かにお互いを中傷している。
それらは小中学校の女子グループの延長にあり、物語の過程で主人公はその類のつきあいと決別する。
主人公の変化と成長を説明するうえで必要悪の存在とは思いつつ、しかし、知らない人がこれ読んだら
「あー専業主婦で幼稚園通わす母親達はこんなレベル低いのか」って思うかも。
公園の派閥とか幼稚園ママのグループとか、巷でも言われるしこの小説にもでてくるけど、実際どれだけあるのかしら。常々疑問に思う。
いやまあしかし、専業主婦の地位は低いねぇ、と自嘲してみたり。

思いおこせば私の母はばりばりのワーキングマザーだった。その背中を見て育った私は
女性は家事育児を行いつつ、家の外に出て稼ぐことも続けていったほうがいい。
家の中にいるだけだと、成長が止まる。
と思っていた。
だから、いざ自分が専業主婦の立場になってみると「これでいいのかなー」という思いがないこともない。
・・・でもさ、いいよ。いま一番大事なことは私自身のレベルアップじゃないもの。
他人にどう見られたって関係ない。当面はゆっくり子育てしていきましょう。
(でもって、茶の間せんべい、ずずっとな)


町長選挙 [本]

奥田英朗「町長選挙」を読みました。

伊良部医師シリーズの第三弾。
4編収録のうち、実在の有名人をもじった話が3編ある。
大手新聞社会長のナベマン、新興IT長者のアンポンマン、元宝塚で遅咲きの白木カオル。
ネーミングも設定もそのものである。
「ああ、あの人」と知っているからこそ週刊誌のようなノリで想像しやすく読みやすい。
一般人と文筆家では情報ソースが違うかもしれないけど、でも、同じようにメディアごしに有名人をみていたとして、作者はこういう想像をするのかな、と思うとまた一興。

主人公達は精神病のさまざまな症状に悩まされている。
症状は問題の表層であり、その原因とのつながりも面白い。
(まあ当事者は苦しいのにそれを見て面白いってのもなんだなと思いつつ)
視点は常に病人側にあるけど、作者は彼らを大っぴらに擁護するでなく、逆にダメさ加減をさらした上でなお、チャーミングな部分を残す。
ここにはいろんな人が病気で苦しむ話が集められているわけだけど、健全な作者のおかげで読者は安心してその闘病記を観戦していられるのだと思った。

ただひとつ有名人がでてこないのが、本の題名にもなった町長選挙というお話。
ワイロが横行する離島の選挙。
離島研修で二年間赴任中の主人公は、対立する両陣営からワイロをうけ、脅されて、自律神経失調症に悩まされる。
しかし次第に、それまで悪としか見えなかったものが、すこしずつ形を変えて見えるようになっていく。
このあたり笑いと騒動をドタバタまじえつつ、わざとらしくないよう徐々に主人公の価値観を転回させていく。見事。

伊良部、ほんといいキャラクターです。
でも実際、彼が隣にいたらかーなーり不愉快だと思うけど(笑)
看護婦のマユミちゃんがますます重要度アップ。
いいよいいよーマユミちゃん好き。


涼宮ハルヒの憂鬱 [本]

谷川流「涼宮ハルヒの憂鬱」を読みました。

微妙に非日常系学園ストーリー。

ネットで「涼宮ハルヒ」が流行っていると聞いたので、ちょっと借りてみた。
スニーカー文庫だー、ビバ思春期!なんかこういう文庫なつかしいな。

まず出てくる女の子は全員美形。気が強い娘、無表情なメガネの娘、ナイスバディな娘、優等生な娘、各種が粒ぞろい。
で、主人公の男の子はこれら美少女たちに総モテ状態です。いいなー。
こういうノリどっかで見たかも・・・そうだ、赤松健だ。ラブひな、ネギまだ。
ごめん赤松健ぜんぶ読んでるわけじゃないけど、なんか同じにおいがする。
リアルさを感じられないキャラクターにリアルさを感じられないストーリー。
でもこういうのが好きな人にはたまらないっていう。

全く面白くないとまでは言わないけど、いかんせんキャラクターに頼りすぎ。彼女らに対する作者の愛はひしと伝わりますが。
で、そのキャラに私は感情移入できなかった、「萌えなかった」ので正直物足りませんでした。
でもまあデビュー作らしいので・・・大丈夫、そっち方面の市場は広いから、このノリでOKでしょう。もと腐女子の太鼓判をば。(いらないだろうな)


家族狩り [本]

天童荒太「家族狩り」を読みました。
(読んだのはちょっと前だけど夏休みが終わる前になんとかアップ小説その4)

高校生が自分の両親を殺し、自らも自殺するという事件が続発する。
両親の死体には凄惨な傷が残っていた。まるで拷問されたあげくに殺されたかのように。
子供が自分の親を、果たしてここまでむごたらしく殺せるのだろうか。

大きくわかれて、事件を解決する側の刑事と教師、この二人を主軸にして物語がすすんでいくのだけれど、これが二人とも欠陥だらけ。読み手の共感をひくそぶりもない。
特に刑事の馬見原、不倫するわヤクザ殴るわ裏取引するわ。高い事件解決能力はあるけど、無愛想で刑事仲間からも尊敬されていない、こんな散々な設定の刑事も珍しいんじゃないかしら。
物語とともにこの人物も変わっていくのだけれど。

親は子供に真の愛情を見せてあげることができるのか。
重いテーマです。
私も、もし他人から「子供の教育を間違ってる」なんて言われたら、平静ではいられないはず。
家事が下手とか仕事が遅いとか言われても、表面上はふーんて流せるけど、子供に関して自分に落ち度があるようなことを言われると「どうして?どこが?」と食い下がってしまいそう。
この、我が子に対する(もしくは、我が子を介在とした自分への評価に対する)親のヒステリックな気持ちって、いったいなんなんだろう。
自分の子が不幸になればいいと思う親なんて、絶対いない。
子供には幸せになってほしい。親は親なりに、自分の子が輝くよう精一杯のことをやってあげたい、と思っているはず。
でも、その「精一杯やってあげる」ところで、いろいろな問題がでてくるのかもしれない。難しい。
なんとなくわかるのは、子供は親の映し鏡ではないということ。子供=親ではない。子供は子供、親は親。わかっているつもりなんだけど。
娘や息子が成長するにつれ、こういうこと考える機会が増える気がします。ひしひしと。

家族の意味に重きを置きすぎて、狂っていく夫婦。彼らの要求する「愛」は大仰で的外れで全く現実離れしている。
その一方、もし自分が属する家族が壊れてしまっても、また別に新たな家族をつくることができる、という救いの道も示されている。

シロアリがすごく怖くなりました。


マドンナ [本]

奥田英朗「マドンナ」「ララピポ」を読みました。
(読んだのはずっと昔だけど夏休みが終わる前になんとかアップ小説その3)

両方とも短編集。
マドンナはいろいろな課長さんたちのお話。一話ごとに設定が違う課長さんがでてくる。
ララピポは性風俗にまつわるお話、ある共通するストーリーを登場人物ごとに視点を変えて描いている。

どちらもユーモアがあって面白かった。軽く読めるし、余韻もある。
ララピポのたまえちゃんみたいな、ずぶとくて、かつ愛らしいキャラクターを描けるのって素晴らしいと思う。
マドンナでは、孤独を愛する老人のお話が印象的だった。


風味絶佳 [本]

山田詠美「風味絶佳」を読みました。
(読んだのはずっと昔だけど夏休みが終わる前になんとかアップ小説その2)

肉体労働系の男性を巡る、さまざまな恋愛模様。

表題作含め3作ほど。
主人公は男と女両方で、どれも肉体労働の男と、ちょっとひとくせある女の組み合わせである。

恋愛小説なんて読むの久しぶりで、まず、色恋沙汰はそんなに簡単にそこいらにあふれているものなのかと面食らった。
とび職、ゴミ清掃員、ガソリンスタンドなどバラエティに富んでる男性の職業、その着眼点はいいと思うけど。
なんというか、細部にこだわりすぎてちまちましてるっていうか、、いや、ちまちまじゃなく「日常の機微を繊細に描写」というべきとこなのかなぁ。
でもセリフはけっこう歯が浮くようなかんじだし。うーん、いまの私にはちょと合わないかな。フィクションならもっとリアルではじけたものが読みたい気分。
以上、ちまちました日常を送る私でした。(色恋は欠けてるけどね、はっはっは)


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